不思議少女
夏を思わせる様な日差しの中、夏の大会へと本格に動き出す前に
体調を整えるとの意味での休みの中、昼食を終え、
図書館で借りた本を読んでいれば、
池に何かが落ちる音がし、慌て庭に飛び出せば、家族全員が揃っていた。
全員で揺れ動く池を見つめていれば、
程なく気泡が出始め、水面が波打ち、人影が見えだし、
嫌な想像が脳内に浮かび理解した瞬間、
足を動かし池の中へと入って行く。
膝下までの池の中を見つめ、
見えたモノを捕まえ引き上げれば、
女の子だった。
引き揚げ、観察をしていれば、大きな目をさらに大きくしたかと思えば、
激しく咳込み、足を池底に着けてやると、背中を丸くし、
必死になって呼吸を調えだす。
しかし・・60センチ程の池で溺れるとは・・・
上下に揺れていた肩が治まり、
髪や頬を伝い滴り落ちる水を見ていれば、
「国光もそちらの方も、池から上がってらっしゃい。
暖かいと言っても、そのままでは風邪を引いてしまうわ」
穏やかな微笑みで告げられた言葉に頷き、
掴んだ腕を引っ張り池から出て、改めて女の子を見れば、
白いレックオーマに紺色のダッフルコート、
毛糸の手袋、真冬の様なカッコに首を傾げる。
5月と言うのに、このカッコはいったい・・・
呼吸は整ったのか、視線だけ上に上げるが、
すぐに下を向き、立ち尽くしていた。
「まずは、お風呂ね。いらっしゃい」
手招きをする母の声に顔を上げ、
戸惑った表情と動かない足に
「遠慮しなくても、大丈夫」
いらっしゃい。
再び手招きをし、来る様に呼べば、
「あ・・ありがとうございます」
少し枯れた声が聞こえ、ゆっくりと歩き母の元へ行く。
微笑みを絶やさない母に言われるまま、小物を取りコートを脱げば、
見慣れない制服が現れた。
いったいどこの学校だ・・
紺色でセーラーの様なワンピース風の制服にネクタイの形をしたリボン。
始めて見る人物は学生だと教える服に疑問が出てくる。
なんなんだ・・・
いったい・・・・
自分の中にある知識を集め考えても答が出る訳ではなく、
溜め息を付き視線をさまよわせば、カバンがある事に気付き、
近寄り持ち上げれば、外ポケットに何か入ってる事に気付き、
女生徒に目を向けるが、母に連れられ家の中へと入っていく所だった。
呼びかけ様と手を延ばしかけるが、声が出ず、再び溜め息を落とし、
カバンから抜き取り見てみれば、
ビニールのカバーがかかった生徒手帳を広げる。
高校3年なのか・・・
貼られた写真と先程見た人物が同じ顔をしていたが、
書かれている学校名は知らない名前が書かれていた。
都内では無いと言う事か?
導き出した答に納得をするが、
書かれている住所に顔を驚きを隠せなかった。
都内だと・・
何度見直しても書かれた住所が変わる事は無く、
混乱する頭に溜め息を付き、
見付けたカバンを持ち室内へと入っていった。
自然とダイニングに集まり女の子が出てくるのを待つ。
誰ひとりとして口を開けず、言葉を出さない。
静寂な空間が広がり出す中ヒタヒタと裸足で歩く音が耳に入り、
近付く中、オドオドした感じを感じ開くであろうドアを見つめれば、
制服から私服へと着替えた姿に、幼さを感じた。
本当に高校生なのだろうか?
肩まで伸びた真っ直ぐな黒い髪
今は戸惑いの色を見せる目は大きく見えた。
「こちらにどうそ」
座っていた席を立ち、その席を勧めれば、
母と椅子を交互に見、母の頷いた姿に、
「スミマセン・・・」
頭を下げ、ゆっくりと歩いてくれば、
「有難うございます」
小さな声で礼を言い、椅子に腰掛けた。
居心地の悪さからか下を向いて黙ったままでいれば、
「どうぞ・・」
湯気の立つ湯飲み茶碗を前に置けば、
再び小さな声で礼と頭を下げる。
礼儀正しいな・・
じっくり観察をしていれば自分の前にも湯飲みが置かれ、
「有難うございます」
声を出して礼を言えば、驚いたのか、体を揺らし視線を上げるが、
合った瞬間に勢い良く反らし再び下を向いた。
お茶を啜る音が聞こえる、戸惑いながらの視線が母を捕え、
ジッと見つめた後、湯飲みを手に持ち、
一口飲み、ホッと息を落とす。
「さて・・」
祖父の言葉で会話が始まる。
当然、女の子の事で。
聞きたい事は沢山ある。
どうして池の中で溺れていたのか。
同じ東京なのに知らない地名が書かれているのか。
1つ1つ時間をかけて聞いていく。
「 です」
高く、ハリの無い声は言葉を切り、
考えながら作られゆっくりと返されるが、
ドレも信じられる事では無かった。
「私も信じられなくて、
信じたく無いけどココがドコだか解らないし・・・」
話している中、上げていた顔を下げ、言葉を落とす。
お互い状況は解らずじまいか。
溜め息を付きたくなる現状に、眉をしかめれば、
「帰れるまでココに居ると良いよ」
父の言葉に祖父も頷き是と言う。
母は穏やかに笑い、父の言葉に賛成している。
身元も解らない者を、この家に置くのか?
浮かぶ疑問に納得をするが、解らないからこそ外に出す危なさを考え、
2つの考えが即座に天秤にかけられ答が出る。
部屋など忙しくなるな・・・
傾いた答に溜め息を出せば、
「あの・・ご迷惑をかけてしまいスミマセン」
机に額が付く程、頭を下げる。
「気にしなくて大丈夫だよ」
父が穏やかに笑い、
父親の顔になっていた。
寝ぼけて祖父に怒られている父を見る事が多く、
父親の姿を忘れていた自分に例え様の無い気持ちが沸き上がり、
溜め息を落とせば、視線を感じ、
視界を動かせばと目が合が直ぐさま外される。
なんなんだ?
反らされる程、嫌われているのか?
『笑いたい時には笑った方が良いよ。
じゃないと嫌われちゃうよ』
感情が読みにくい表情だと、
微笑みながら言われた事を思い出し、
今がその状態か。
と、納得してみる。
いつも、微笑んでいる方が解りにくいと思うが・・・
ジッとを見ていれば、お腹を押さえており、何かと疑問を持った瞬間。
ぐぅ・・・
お腹の音が聞こえ、溜め息を付く。
空腹を訴えたかったが恥ずかしかったのか・・・
納得し、いつの間にか大人3人で話し合いをしている中、
「母さん」
母親だけを呼び、何か軽く作って貰う様に頼めば、全員に伝わり、
「腹が空くのは元気な証拠じゃ」
満足げに頷く祖父と苦笑する父の姿に
やれやれ・・・
心の中で溜め息をつけば、
「有難うございます」
小さな声に視線を合わせれば、箸を持ち、手を合わせている所だった。
満足そうに頷く祖父
優しげに笑う両親。
礼儀正しい事に頷きかけた自分も、
を家族として受け入れているのかもしれない。